1. 近傍枝探索における近傍矩形の大きさ
最終的な主張はTheorem1であり、それを証明するためにLemma1と2を示す。
1.1. Lemma1
0<r≤d, ∂L≡{x∈R2∣∥x∥∞=d}を定める。
半径r上の円周上の点を(x,y)T∈R2(x≠0,y≠0)の接線とLには2つの交点が存在するが、その2点間の距離(ℓ2ノルム)をl(x,y)とおくと、|x|=|y|=r√2の時に最小値2(√2d−r)をとる
(proof)
対称性より0<x<r,0<y<rを満たす円周上の点についてのみ考えれば良いので、以下ではそこに限って話を進める。
一般に半径r>0の円周上の点(x0,y0)∈R2の接線の方程式は以下で与えられる。
x0x+y0y=r2
ゆえに円周上の点(x,y)T(0<x,y<r)を通る接線は以下の2点を通る。
p1(x,y)≡(d,r2−dxy)T,p2(x,y)≡(r2−dyx,d)T
この2点間の距離l(x,y)の二乗は極座標表示を用いると以下のように表される。
(l(x,y))2=∥p1(x,y)−p2(x,y)∥22=(r2−d(x+y)x)2+(r2−d(x+y)y)2=(r2−d(x+y))2(x2+y2)x2y2=r2(r2−d(x+y))2x2y2=r4(r−d(cosθ+sinθ))2r4sin2θcos2θ=f(θ)
(l(x,y))2=∥p1(x,y)−p2(x,y)∥22=(r2−d(x+y)x)2+(r2−d(x+y)y)2=(r2−d(x+y))2(x2+y2)x2y2=r2(r2−dr(cosθ+sinθ))2r4sin2θcos2θ=(r−d(cosθ+sinθ))2sin2θcos2θ=f(θ)
ここで、
f(θ)=(r−d(cosθ+sinθ))2sin2θcos2θ
と定義した。ゆえに、上記の問題は開区間(0,π2)におけるf(θ)の最小値を求める問題に帰着される。まず、fの微分f′を求める。
(sin2θcos2θ)′=2sinθcosθ(cos2θ−sin2θ)
であるので、
f′(θ)=2sinθcosθ(r−d(sinθ+cosθ))(cosθ−sinθ)(−dsinθcosθ−(r−d(sinθ+cosθ))(cosθ+sinθ))sin4θcos4θ=2(r−d(sinθ+cosθ))(d(1+sinθcosθ)−r)(cosθ−sinθ)sin3θcos3θ
まず、r−d(sinθ+cosθ)について評価する。
sinθ+cosθ=√2sin(θ+π4)であり、0<θ<π2よりπ4<θ+π4<34πであるので、
1<sinθ+cosθ<√2
ゆえに、
r−d(sinθ+cosθ)<r−d≤0
続いてd(1+sinθcosθ)−rを評価する。
0<θ<π2の時に0<sinθ,cosθであるので
d(1+sinθcosθ)−r>d−r≥0
最後にcosθ−sinθの評価を行う。
cosθ−sinθ=−√2sin(θ−π4)であり0<θ<π2より−π4<θ−π4<π4であるので、
−π4<θ−π4<0つまり0<θ<π4のときcosθ−sinθ>0
0≤θ−π4<π4つまりπ4≤θ<π2のときcosθ−sinθ≤0
以上をまとめると、0≤θ<π4の時f′(θ)≤0でありπ4≤θ<π2のときf′(θ)≥0である。
ゆえに、(0,π2)の範囲でf(θ)はθ=π4の時に最小値4(√2d−r)2をとる。
ゆえに、半径r上の円周上の点を(x,y)T∈R2(x≠0,y≠0)の接線と∂Lには2つの交点が存在するが、その2点間の距離l(x,y)は|x|=|y|=r√2の時に最小値l(x,y)=√|4(√2d−r)2|=2(√2d−r)をとる。
1.2. Lemma2
0<r≤d, ∂L≡{x∈R2∣∥x∥∞=d}を定める。
半径rの閉円板D≡{x∈R2∣∥x∥2≤r}と共通部分を持つ任意の直線とLには2つの交点が存在するが、その2点間の距離(ℓ2ノルム)をl(x,y)とおくと、|x|=|y|=r√2の時に最小値2(√2d−r)をとる。
ただし、d=rでx軸もしくはy軸に平行な直線の場合のみ、交点が無数に存在するので、その時の距離l(x,y)はdと定める。
上記の結果より、長さが2(√2d−r)以下の任意の線分はDとの共通部分を持つなら、少なくとも片方の端点はL≡{x∈R2∣∥x∥∞≤d}に含まれる。
(proof)
(i)原点を通る直線の場合
(−d,0)Tと(d,0)Tの2つの交点を持つか、(0,−d)Tと(0,d)Tの2つの交点を持つ場合が距離が最小で2点間の距離は2d
(ii)原点と直線の距離がr′(0<r′≤r)でx軸もしくはy軸に平行な直線の場合
d=rの場合の距離は仮定の定義よりdでd>rの場合は距離は2d
(ii)原点と直線の距離がr′(0<r′≤r)でx軸とy軸に平行でない直線の場合
Lemma1より|x|=|y|=r′√2を満たす(x,y)を通る直線が2点間の距離を最小にし、その時の距離は2(√2d−r′)となる。
以上より、|x|=|y|=r√2を通る直線の時、2点間の距離が最小となりその
時の距離は2(√2d−r)
1.3. Theorem1
道路ネットワークの枝の最大長さℓmax>0が与えられているとする。
位置座標が与えられた時に、その座標との距離がr>0以下である枝を取得したいとする。(ノルムはℓ2を用いる)
そのために、少なくとも1つの端点がL≡{x∈R2∣∥x∥∞≤d},d≥rに含まれる枝を全て抽出するという方法をとるとする。
この時、距離がr>0以下である枝を全て抽出するためのdの必要十分条件は
2(√2d−r)≥ℓmax⇔d≥12√2(ℓmax+2r)
(proof)
Lemma2から従う。
2. Backup
ゆえに元の問題はf(x,y)の0<x,y<rにおける最小値を求める問題に帰着される。ここでx↑rのときy↓0となるのでf(x,y)の分母は0に近づく、一方でx+y→rとなるのでd>rの時はf(x,y)→∞となる。d=rの時はc≡x+yとおくと、
xy=12((x+y)2−(x2+y2))=12(c2−r2)
となるので、
f(x,y)=r2(r−(x+y))2x2y2=4r2(r−c)2(c2−r2)2=4r2(r+c)2
であるので、x↑rの時c=x+y→rとなりf(x,y)=1となる。この時L(x,y)=rとなっている。x↓0の時も同様の結果が得られるので、L(x,y)<rを満たす広義の極値のうちL(x,y)が最小のものをLagrange未定乗数法を用いて求める。
fx(x,y)=−2dx2y2(r2−d(x+y))−2xy2(r2−d(x+y))2x4y4=−2(dx+r2−d(x+y))(r2−d(x+y))x3y2=−2(r2−dy)(r2−d(x+y))x3y2
であり、(x,y)の対称性から
fy(x,y)=−2(r2−dx)(r2−d(x+y))x2y3
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